ToDoリストは「仕事のカーナビ」 大量タスクに嫌気が差す人が知らない使い方

仕事の管理にToDoリストを使っている人も多いだろう。筆者もその一人だ。大手金融機関に勤めており、かつては一日14時間ほどの長時間労働をしていたが、ToDoリストの活用などタスク管理を見直すことで、2016年から「残業ゼロ」を達成し続けている。

しかしなかには「ToDoリストを見ると精神的に追い詰められ、自己嫌悪に陥る」という人もいるようだ。筆者は、これはもったいないことだと考えている。精神的に追い詰められるどころか、ToDoリストは使い方次第で、安心して仕事を進めていける「仕事のカーナビ」のような存在になりうるのだ。

どのようにToDoリストを活用すれば、安心して仕事を進めるツールとなるのだろうか。「残業ゼロ」を実現するタスク管理の専門家として、ToDoリストの効果的な使い方について考えてみたい。

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一日に何度もToDoリストを見ると仕事が遅くなる?

先日、ToDoリストに関して気になる記事を読んだ。「1日何度もToDoリストを見る人の仕事が遅い理由-成績TOP5%と残り95%の仕事のやり方の差」(東洋経済オンライン 2022/07/19 越川 慎司)という記事だ。

『成績がトップ5%の社員が効率よく短時間で成果を出すために実践している時間術のうち、2.2万人の「一般的な95%の社員」で再現実験し、成果が見られたものについて紹介』とされていて、一日に何度もToDoリストを見ている筆者は気になって内容を確認してみた。

記事には次のように書かれていた。

『5%社員はタスクを忘れないように、1日2回はToDo リストをチェックしていますが、それ以上チェックすると、自己肯定感が下がるとも捉えていました。期限つきの多くのタスクを眺めていると、精神的に追い詰められ、できていない自分を否定し、自己嫌悪に陥ってしまうことを理解していたのです。』

たしかに、一般的に多くの人が行っているToDoリストの書き方では、眺めるごとに自己嫌悪に陥るようなToDoリストができあがる可能性がある。これは、ToDoリストを使う上で注意すべき点だ。

しかし、そもそも精神的に追い詰められるようなToDoリストを作っているから、何度も見ることによって自己肯定感が下がるのだと筆者は考えている。むしろ、ToDoリストは適切に活用さえできれば、1日に何度も確認したほうが望ましいものだ。

人は先の見通しが立たないと不安を感じる

なぜ一般的なToDoリストを見ると、人は精神的に追い詰められてしまうのだろうか。

誰でも、5 km先のゴールを示され「◯◯まで走ってください」と言われて走るのは平気でも、「 こちらがOK と言うまでとにかく走ってください」と言われると途端に不安になるだろう。

先の見通しが立たないと、人は不安を感じる。このことから、大量のタスクが並ぶToDoリストを見ると、人は「やらなければいけないことが多すぎる」とプレッシャーを感じ、まるで永遠に働きつづけなければいけないかのような錯覚を覚え、不安になるのだ。

今日だけのリストを作る

ではどんな工夫をすれば、先の見通しが立つToDoリストを作ることができるのか。

ToDoリストを作るうえでまず大切になるのが、仕事をはじめる前に「今日取り組むタスクだけが書き出されたToDoリスト」を作ることだ。

自分が今抱えている全てのタスクが表示されているToDoリストを見れば、筆者でも「やらなければいけないことがあまりにも多すぎる」と感じ、自己嫌悪に陥ってしまう可能性がある。

しかしToDoリストの中から、今日やるタスクだけを抜き出した別のToDoリストを作り、仕事中はその「今日取り組むタスクだけが書き出されたToDoリスト」を見るようにしたらどうだろうか。

これは実際にやってみるとわかるが、気持ちがずっと楽になる。「やらなければいけないことはたくさんあるけど、ひとまず今日一日はこれだけやればいいんだ」と感じるからだ。

著名な事業家のD・カーネギーは著書『道は開ける』で「過去と未来を鉄の扉で閉ざせ。今日一日の区切りで生きよう」と書いている。

どれほどたくさんの仕事を抱えていても、今日できる仕事量は限られている。それならば、誰でも「今日一日にやる仕事」のことだけを考えればいいのだ。

そのためには、まず「今日取り組むタスクだけが書き出されたToDoリスト」を作る。これが自己嫌悪に陥らないToDoリストを作る第一歩と言える。

ToDoリストを「仕事のカーナビ」にする方法

もう一つ、自己嫌悪に陥らないToDoリストを作るために大切なのは、時間の概念を取り入れることだ。

車のカーナビをイメージしてほしい。

カーナビでは目的地を設定すると到着予定時刻が表示される。 到着予定時刻は、通常目的地までの距離をもとに、カーナビが自動計算した所要時間の目安となっている。

実際に運転をはじめると、車の走行速度や道路の混雑状況によって到着予定時刻はリアルタイムで刻々と変わっていく。

運転者はカーナビを常にチェックすることで、目的地に予定通り(たとえば待ち合わせの時間に遅刻せずにすむように)着くことができると安心して、運転できる。

この仕組みをタスク管理にも組み込むのだ。

一般的なToDoリストは、次のように今日やるべきタスクが単に箇条書きで書かれてることが多い。

  • 勉強会の準備
  • メールチェック
  • A さんに電話
  • Bさんと打ち合わせ

これらのタスクに、各タスク毎にかかる所要時間を次の例のように見積もり、ToDoリストに反映させる。

  • 勉強会の準備‥‥‥‥‥20分
  • メールチェック‥‥‥‥‥15分
  • A さんに電話‥‥‥‥‥10分
  • Bさんと打ち合わせ‥‥‥‥‥60分

今日取り組もうとしている全てのタスクについて所要時間を見積もると、各タスクの所要時間の総和(合計)を計算することで、今から仕事をはじめたとして、何時何分に仕事が終わる予定なのか、理論上は見通しが立つようになる。

たとえば著者が使っている「TaskChute2」というタスク管理ツールでは、入力した各タスクの所要時間を自動計算し、予定終了時刻を表示してくれる。

この予定終了時刻を活用すると、今現在ToDoリストに書かれているタスクを全て予定通りこなしたら、何時何分になるか。見通しが常にリアルタイムで確認できるようになる。

20分でタスクを終わらせる予定が、実際は30分かかってしまった場合には、それが予定終了時刻に反映されて10分後ろ倒しになる。

カーナビが目的地に近づけば近づくほど到着予定時刻が正確になっていくように、タスクを完了させればさせるほど、予定終了時刻も正確になっていく。

18時に帰りたいのに、予定通り仕事が進められずに予定終了時刻が20時になっているなら、2時間分のタスクを減らさなければいけないこともわかる。

こうして予定終了時刻を常に調整しながら仕事を進めていくことで「この計画なら18時に予定通り帰れそうだ」と安心しながら仕事を進めていけるようになる。

「各タスクの総和時間をいちいち計算することなんて煩わしい」と感じる人もいるかもしれない。筆者もそう感じる人間の一人だ。エクセルで管理してもいいが、筆者のように時間を自動で計算してくれるツールを使うのもおすすめだ。

このように、予定終了時刻がリアルタイムで表示されるToDoリストを作ることができれば、予定通り仕事を終えることができるか否かを、常にToDoリストが教えてくれることになる。ToDoリストはむしろ何回も確認したほうがいいと言える。

ToDoリストは適切に活用できれば、安心して仕事を進めていける心強い味方になる。ぜひ自分にあったToDoリストを活用してほしい。

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この記事を書いた人

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滝川 徹

「30分仕事術」考案者。Yahoo!ニュースやアゴラに記事掲載多数の現役会社員。作家。タスク管理の専門家・セミナー講師。

1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。

時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』他。

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