「私は間違ってない!」 感情的に対処して後悔する自分をやめる方法-人間の「ディフェンスメカニズム」について

妻や上司から注意や指摘を受けた時、ついカッとなって「私は間違ってない!」と言わんばかりに言い返す・言い訳をする。あるいは衝動的な行動を取って後で後悔する、、。そんな経験はないだろうか?

ちなみに私はしょっちゅうだ。他人から注意されると、反射的に自分がダメ人間のように思える。そう感じたくないからだろう。まるで防衛反応のように「そうじゃないんだ!」と自分なりの理由を一生懸命説明したりする。

そうすると大抵相手も感情的になり口論になる。人間関係がうまくいかない。これが近年の私の悩み・課題となっていた。

しかしこうした防衛本能とも言える「ディフェンスメカニズム」は実は誰にでもあり、その特性を知ることでうまく対処できるようになる。最近このことに気がついてから同じシチュエーションでもずいぶんうまく立ち回れるようになった。人間関係も劇的に良くなりつつある。

誰もがもっているこのディフェンスメカニズムとは一体なんなのか。どうすれば感情的に反応せずに他人とうまくコミュニケーションを取れるようになるのか。

ニューヨークタイムズベストセラー作家が若かりし頃に経験した苦い話を紐解きながら考えてみたい。

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怒りのあまり3時間を無駄にした若者の話

ある日曜日シェインが出勤すると、同僚は近づいてくるなり「君が書いていたコードは2日前に完成する予定だったはずだ」と問いつめた。彼らは一緒に重要なソフトウェアの開発をしていた。シェインのせいでプロジェクト全体が危うくなっているという。

当時彼らは休日もなく、尋常じゃないくらい働いていた。仕事が遅れたのもとてつもなく忙しかったからだ。シェインは彼に仕事が遅れた理由を説明した。上司から最優先と言われた別の仕事があったこと。金曜日の朝にバスが雪で動かなくなり出勤に2時間かかったこと、など。

しかし彼は同情するどころか「君は自分が悪くない。そう言いたいのか?」「言い訳をするな!」と言って背を向けて歩きはじめた。「君のせいでプロジェクトは中止になるかもしれない」と振り返りもせず言い放ったという。

この行為に怒り心頭となったシェインは、今週処理した仕事のリストを作りはじめたという。働いた時間、取り組んだプロジェクトの数、助けた人々の数。これらをリストアップすると1ページに及んだ。それを彼にメールした。

数分後彼から来た返事は次のようなものだった。

こんなのどうでもいい。仕事を期限内に終わらせる全責任は君にある。
P.S.バスが遅れたことを言い訳にするな。車を買え」

この返信はシェインを数時間狂わせたという。彼はこの出来事をふりかえり、次のように語る。

『誰かが私の肩を叩いて「君はこれに3時間のエネルギーを費やそうとしているよ、本当にそれ=リスト作りをやりたいのか?」と言ってくれたら、私はノーと言ったでしょう』

シェインは「自分は悪くない」と主張するために3時間、本来ただでさえ遅れている仕事に費やす時間を無駄にしたのである。

人はアイデンティティを脅かされると防衛的になる

シェインの話は客観的に見れば笑ってしまうくらいバカげている。リストを作る時間があるなら遅れてる仕事に取りかかりなよ。誰もがそう感じたはずだ。しかし彼は不合理な行動を取った。問題は「なぜか?」ということだ。

それは彼のプライド・アイデンティティが傷つけられたからだ。彼は自分のことを一生懸命仕事をする人間で、仕事を確実に遂行する人間だと自負していた。そんな中、同僚は彼を責任感のない人間のように扱った。そのことで彼のプライド・自分に対するイメージ=アイデンティティが侵食されたのである。

人は自分のアイデンティティが侵食されると、それを守ろうと「反応」する。シェインのように感情的になり、不合理な行動をとってしまうのだ。やっかいなのがこの反応は人間の防衛反応のようなもので、自動・無意識下で行われることだ。

一度反応=スイッチが入ると。人は感情的になり冷静に対処・行動ができなくなる。そしてこの「自分は悪くない!」というディフェンスメカニズムは、誰もが持っている。それによる反応は日常でよく起こるものなのだ。

僕自身、昨年頃からこうした自分のパターンに気づくようになった。たとえば上司から注意をされる。妻から何かを指摘される。そんな時、つい「自分は間違ってない!」と感情的になって言い訳をはじめる自分に気がついた。

感情的になって言い返すと、大抵の場合相手も感情的になって言い合いになる。シェインの例からもわかる通り、感情的になると不合理な行動・発言をしてしまう。良い結果を生まないのは明らかだ。

一方で、ディフェンスメカニズムは無意識・自動操縦で起こる反応でもある。この反応自体をコントロールするのは難しい。では我々はこれに屈するしかないのか。

大丈夫だ。希望はある。最近の僕が心がけていることを紹介したい。

「自分のパターン」を自覚すればうまく対処できる

一つはシンプルに「自分にはこういう傾向・パターンがある」と知っておくことだ。

他人から注意されたり指摘されると、自分は反応してしまい感情的になる。このことを知っておく。そうすれば感情的のスイッチが入った時「あっ、いつものパターンに陥っている」と気づくことができる。

反応すること自体は避けられない。でも反応していることを自覚できれば、一呼吸置くことで冷静になることができる。一度冷静になれば相手とも冷静に話ができる。一時の感情で人間関係にヒビが入ることもなくなる。シェインのように3時間無駄なことに時間を費やさずにすむというわけだ。

ディフェンスメカニズムの話は突き詰めていくとトラウマなど、心理学的な分野の専門的な話に及ぶことになる。その話に踏みこむと1冊の本になってしまうのでここでは言及しない。

まとめ

この記事で言いたいことをシンプルだ。我々にはディフェンスメカニズムがあり、人から注意されたり指摘されることで「自分が間違ってない!」と自分を守ろうとする癖がある。このことを知っておこうというものだ。

このことを知っておけば、いざ自分が反応した時に冷静になることができる(可能性が高まる)。そうすると人間関係の無用なトラブルや、不合理な行動に費やす時間は大幅に減るだろう。

ということで参考にしてほしい!

(※)今日のエピソードはこちらの本から引用した。良かったらチェックしてみてほしい。

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この記事を書いた人

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滝川 徹

「30分仕事術」考案者。Yahoo!ニュースやアゴラに記事掲載多数の現役会社員。作家。タスク管理の専門家・セミナー講師。

1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。

時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』他。

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