「残業ゼロ」が「簡単だけど難しい」と言われる理由

「残業ゼロ」を実現することは、そんなに難しくない。

僕だけではなく、残業ゼロを実践している人に話を聞くと、大抵こういった反応が返ってきます。

これはおそらく本人達にとって残業ゼロが当たり前のことになっているからです。できてしまうと、当たり前となってしまうのです。

僕自身、5年前には残業ゼロなんて「不可能」と思っていました。しかし今は大手金融機関で残業ゼロを実践しています。

また、自分が所属する組織の残業を約20%減らした経験もあります。この経験から、自分に決定権さえあれば、組織の残業ゼロも達成できると確信することができました。

個人においても、組織においても。残業ゼロを実現するために必要なものは何なのか。多くの人は仕事の効率があげることが、この問いに対する解になると思っています。

しかし本当に必要なものは別にあるのです。その要因こそが、残業ゼロを「簡単だけど難しいもの」にしているのです。

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効率が上がっても残業が減らない理由

はじめに、なぜ仕事の効率を追求しても残業をなくせないか。僕の体験をふまえてお話ししましょう。

僕自身、タスク管理をはじめて5年近くになります。タスク管理をはじめて、2年くらいがたった頃には、タスク管理の技術自体は今の僕とそう変わらないレベルになっていたと思います。

しかし当時の僕は残業を減らすことはできていませんでした。自分が所属する組織で一番に出社して、帰りもほぼ最後に帰るという生活を過ごしていました。

その理由はシンプルです。こなしていた仕事量自体が、多すぎたのです。ここに効率をあげても残業を減らさない理由があります。

そこには「大量行動すれば成果がでるはず」という思いこみがあるのです。

「より多く」の精神が残業を生む

今の日本では、「がんばったらがんばった分、成果が出るはず」という考え方が浸透しているように思います。

僕自身も昔はこう考えていたように思うのです。そしてこうした考え方をしていると、仕事の効率をあげたとしても、空いた時間で別の仕事をやろうとしています。

その結果、個人の効率が上がれば上がるほど、より多くの仕事をこなすようになり、仕事が終わらなくなるというジレンマに陥るのです。

そんな僕が、残業を減らすことができるようになったきっかけは何だったのか。それは残業をやめる動機が出来たことでした。

「早朝残業をやめても仕事は問題なく回る」という体験が転機に

僕の場合、2年程前にはじめたこのブログが、残業を減らそうという決意を促してくれました。

ブログが楽しくなり、毎日書きたいと思うようになりました。ブログを毎日書くには、新たに時間を捻出しなければなりません。

小さい子供もいるし、家族との時間を減らしてしまったら本末転倒です。そこで早朝残業をやめることからスタートしたのです。その時間にブログを書くようにしました。

その結果、毎日がとても楽しくなっていきました。そして予想通りというか、早朝残業をなくしても仕事が問題なく回っていくことを体感しました。

当時早朝残業は毎日1時間以上やってましたので、月単位でみたらそれだけで20時間以上の労働時間の削減となったのです。それでも問題なく仕事は終わる。

この体験をふまえて、その後僕は残業ゼロの実現に向かっていきました。振り返れば一番大切なものは、「残業を絶対に減らす」という強い気持ちだったと思います。

それは「強い気持ち」というよりは、「覚悟」という言葉の方が適切かもしれません。

残業をなくせなかった「本当の理由」

今まで「強い気持ち」がなかったわけではありません。

僕は入社3年目に吉越浩一郎さんの影響を受けてから、8年以上、個人と組織の残業をいかに減らすかひたすら考えてきました。仕事と家族との時間のバランスをいかにとるか、ずっと考えてきたのです。

しかしそんな僕ですら、劇的に残業を減らすことができなかったのです。そこには前述した考え方の問題もあったわけですが、何より「絶対に残業をなくす!」という覚悟がなかったように思います。

それはなぜか。早く帰ることで、まわりから非難されるというデメリットがあったからです。

課題を克服し、残業ゼロを実現する

僕がいた組織では、総合職はメンバーのために早く帰らずに他のメンバーが帰るまで残っているべきだという風土があったように僕は感じていました、

残業をなくして早く帰っても、まわりから非難されるのが嫌だったのです。実際にそうして非難をされた経験が以前にもありました。

その経験もあり、「早く帰るとまた非難される」、「会社での評価を落とされてしまう」という恐怖が残業をなくす心理的ハードルになっていたのです。

しかしブログは僕に「人生を変えよう」と決意させてくれる魅力がありました。そしてブログを続けていくうちに、僕は以前から恐れていた「他人の目」の恐怖を克服できるようになったのです。

たとえ他人から非難されてでも、自分の人生のために残業をゼロにする。そう覚悟を決めた結果、残業ゼロを実現することができたのです。

このあたりの体験については、拙著「気持ちが楽になる働き方」に書いた通りです。

組織の残業はトップの覚悟で減らす

そして自分の組織の残業を減らし、全国で表彰された時も、振り返れば同じでした。当時の僕は残業を減らして実績を上げることに躍起になっていました。

当時の取り組みは以下のエントリーにも書いています。

成果を出すためには、メンバーに嫌われてもいい。そう決心して、毎日決まった時刻になったらフロアの電気を自ら消灯していきました。決めた施策についても、自らしつこくメンバーをフォローし、徹底していきました。

この取り組みの責任者として、「絶対に残業を減らす」覚悟を決めたのです。その結果、成果を出すことができました。

この経験をへて、組織の「残業ゼロ」を達成することも可能と確信することができたのです。

仕事の効率は覚悟の「補助輪」

僕は8年以上、組織、個人の残業を減らすことをひたすら追求してきました。タスク管理はもちろん、仕事術、残業をテーマにした本は読み漁りました。

そして組織、個人で残業を減らした経験から断言します。

残業ゼロを達成するために一番必要なものは当事者の覚悟なのです。だからこそ、実現が難しいのです。

個人はもちろん、会社が残業ゼロを目指すなら、トップが自らが残業ゼロを実践し、そうした仕事のやり方をメンバーに教えなければなりません。

それはまさに実践したのが、社長時代に社員の残業をゼロにしながらも、19期連続で増収増益を達成した吉越浩一郎さんなのです。

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仕事の効率を上げるのは当たり前のことです。タスク管理もあったほうがいいでしょう。しかしそれらはあくまで「覚悟」の補助輪なのです。

組織のトップに覚悟がなければ、組織の残業ゼロは実現しません。それは個人でも同じ。他人に非難されてでも、残業ゼロを実現するという覚悟がなければ、実現できないのです。

これが残業ゼロの実現が簡単ではない理由です。

一方、覚悟さえ決めてしまえば、なんとかなるとも言えます。労働時間を本気で制限すれば、不要な仕事は淘汰せざるを得ないし、嫌でも効率を上げざるをえなくなるからです。

これは実際に体験した人しかわからないことでしょう。だから残業ゼロは「簡単だけど、難しい」ということなのです。

大切なことは、残業は減らせるという気持ちを忘れないこと

では僕達は残業を減らすためにはどうしたらいいのか。

まずは考え方を変えることだと思います。「いかに楽をして成果を出すか」という発想で挑んでいくことをオススメします。

このことについては、先日エントリーに書きました。

そしてもう一つは、残業をなくすモチベーションを作ることです。それは趣味でも、ライフワークでも、家族でもかまいません。

早く帰りたいという気持ちが強くなれば、「残業を絶対になくす」という覚悟が生まれるからです。

最後はとにかくも、あきらめないことです。「残業を減らすことはできるはず」とあきらめずに意識さえしていれば、タイミングがくれば実現もできるでしょう。

自分たちには実現不可能。そうして残業を減らすことを簡単にあきらめないこと。シンプルではありますが、大切なことだと思ってます。

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この記事を書いた人

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滝川 徹

「30分仕事術」考案者。Yahoo!ニュースやアゴラに記事掲載多数の現役会社員。作家。タスク管理の専門家・セミナー講師。

1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。

時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』他。

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